MAツールで匿名を実名に変えるには?Cookieによる個人特定の仕組みと3つの施策


そもそも、なぜMAツールはWeb上の行動を追跡できるの?
- どの瞬間に「ただの数字(アクセスログ)」が「〇〇会社の佐藤さん」という個人情報に変わるの?
- どうすれば「匿名」の訪問者を「実名」の顧客に変えられるのか具体的な施策が知りたい。
「MAツールを入れれば、Webサイトに来た顧客の動きが手に取るようにわかる」
そう期待して導入したものの、管理画面に並ぶのは「unknown(不明)」や「匿名」の文字ばかり。これでは営業にパスを出すこともできず、期待外れだったと感じる担当者は少なくありません。
「トラッキングの仕組み」と「個人特定の条件」を曖昧なままにしておくと、いつまでも成果は出ません。逆に言えば、仕組みさえ理解してしまえば、意図的に「匿名」を「実名」に変え、商談数を増やすための打ち手が見えてきます。
そこで本記事では、「MAツールが個人を特定する技術的な瞬間(Cookieの仕組み)」を解き明かし、実務ですぐに使える「紐付け数を増やすための具体的な3つの施策」を解説します。
- この記事の要点
MAツールは、Cookieを活用して、お客様一人ひとりのWebサイト上での行動を追いかけている。
Cookieはあくまで「ブラウザに付けられた識別番号」。匿名の整理番号が個人情報と結びつくのは、「メール内のURLクリック」か「フォーム送信」の2つのタイミング。
Cookieと個人情報の紐付け数(実名化率)を最大化する方法として、3つ紹介。①入力フォームの最適化(EFO)で、登録のハードルを下げる②ホワイトペーパーやウェビナー等の「マイクロコンバージョン」を活用する③オフライン経由のリードへ再アプローチしてサイトへ誘導する。
MAツールは主に「1st Party Cookie」を使用するため、サードパーティCookie規制の直接的な影響は限定的だが、同意取得などの法対応は必須となる。
MAツールにおけるCookieの役割:なぜトラッキングに必要なのか
MAツールを導入すれば、「サイト訪問者全員の個人が特定できる」わけではありません。
まずは、MAツールがどのようにしてWeb上の行動を追跡し、個人を特定しているのか、その裏側の仕組みを整理します。
関連記事:MAツールとは?機能・比較・選び方と活用事例を徹底解説
WebトラッキングにおけるCookieの役割と仕組み

Webサイトは本来、ページを移動するたびに「新しいアクセス」として処理されるため、前後の文脈を記憶できません。そこで利用されるのがCookieです。
Cookieは、Webサーバーからユーザーのブラウザに送信される小さなテキストファイルで、ここには固有の識別IDが記録されています。
MAツールのタグが入ったページにユーザーが訪問すると、ブラウザにこのCookie(ID)が付与されます。
すると、ユーザーがサイト内を回遊した時、MAツールはこのIDを読み取ることで「ID:ABC-123のユーザーが、トップページの次に料金ページを見た」という一連の行動として認識できます。
しかし、この段階ではあくまで「ID:ABC-123」という記号でしかなく、それが「鈴木さん」なのか「佐藤さん」なのかは分かりません。
これを「アノニマスリード(匿名リード)」と呼びます。
MAツールで「匿名」を「実名」に変える方法

では、どのタイミングで「匿名」が「実名」に変わるのでしょうか。 2つの方法を解説します。
MAツールで「匿名」を「実名」に変える方法① フォームへの入力
MAツールで「匿名」を「実名」に変わるタイミングは、Webサイト上のフォーム送信です。 例えば、お問い合わせ、資料ダウンロード、セミナー申し込みなどがこれに該当します。
ユーザーがフォームに氏名やメールアドレスを入力して送信ボタンを押すと、その情報はMAツールのデータベースに送られます。同時に、そのユーザーのブラウザに保存されていたCookie IDとも紐付けられます。
しかも、実名化する前の行動とも紐づくのです。
多くのMAツールでは、個人特定される前の「匿名時代の行動履歴」もCookie IDに紐付いて保存されています。そのため、フォーム送信が行われた瞬間に、「実はこの鈴木さんは、1ヶ月前から何度も料金ページを見ていた」という過去の事実も明らかになります。
MAツールで「匿名」を「実名」に変える方法② パラメータ付きURL
もう1つのタイミングは、MAツールから配信されたメール内のURLをクリックした瞬間です。
MAツールから配信されるメールのリンクには、個別のユーザーを識別するためのパラメータ(固有の文字列)が付与されています。受信者がそのリンクをクリックしてWebサイトに遷移すると、瞬時に以下の処理が行われます。
- Webサイト上のMAツールのタグが、ブラウザのCookie(識別ID)を確認する。
- パラメータ付きURLに含まれる「メールアドレス情報(または個人ID)」を読み取る。
- データベース上で「ブラウザのCookie ID」と「メールアドレス」を紐付ける。
これにより、これまでは「誰か分からないID」だったログが、「鈴木さんのアクセスログ」として書き換わります。
この仕組みを活用すれば、フォームを経由していないオフラインで獲得したリードでも、サイト上の動きをトラッキングすることができます。
Cookieとは?マーケターが知るべき基礎知識
Cookieは発行元によって2種類に分類されます。
MAツールを運用する上で避けて通れない「1st Party Cookie」と「3rd Party Cookie」の違いについて解説します。
1st Party Cookieとは
1st Party Cookie(ファーストパーティクッキー)とは、ユーザーが訪問しているWebサイトのドメインから直接発行されるCookieです。例えば、自社サイトなどがこれにあたります。
ユーザーが意図して訪問したサイトとのやり取りに使われるため、ブロックされにくく、MAツールのトラッキング機能の多くはこちらを利用しています。
3rd Party Cookieとは
3rd Party Cookie(サードパーティクッキー)とは、ユーザーが訪問しているサイトとは異なるドメインから発行されるCookieです。例えば、広告配信サーバーが発行するものがこれにあたります。
複数のサイトを横断してユーザーを追跡できるため、リターゲティング広告などで重宝されてきましたが、プライバシー侵害の懸念からGoogle Chromeなど主要ブラウザでの廃止が進んでいます。 MAツールの一部機能(他社サイトでの行動履歴活用など)でこれを利用している場合は影響を受けますが、基本的な自社サイト内の分析機能への影響は限定的です。
MAツールでCookieを活用し個人を特定する3つのメリット
Cookieを用いて個人を特定することは、単に「ログを確認できる」だけでなく、それによって売上につながるアクションが取れるようになるというメリットがあります。 ここでは代表的な3つのメリットを紹介します。
メリット | 活用するMAツールの機能 | 期待できる効果 |
|---|---|---|
ホットリードの発見 | 行動検知 | 「今、検討している」瞬間へのアプローチ |
検討度の可視化 | スコアリング | 見込み顧客へのアプローチの優先順位付け |
自動追客 | シナリオ配信 | 興味関心に合わせた情報の自動提供 |
Web閲覧履歴から「今、検討している」タイミングを見つけられる
BtoBの商材は検討期間が長く、一度接点を持ってもすぐには商談化しません。 しかし、会社の方針変更で急に課題が顕在化し、再び比較検討を始めるケースも珍しくないのです。
そこで活用したいのが、MAツールの「行動検知」機能です。 Cookie紐付け済みのユーザーが久しぶりにサイトを訪問したとき、または料金ページや導入事例ページといった重要ページを閲覧したとき、営業担当者に通知を送ることができます。
検討度が高まっているサインとなる行動をキャッチできれば、競合に先んじて電話をかけられます。
関連記事:営業に喜ばれるホットリードとは?自社に合う作り方・見つけ方・育て方
関連記事:【商談数1.3倍の裏側】スコアリングでは見抜けない“検討タイミング”を捉えた行動検知活用術
顧客の属性や行動を可視化して、架電の優先順位をつけられる
スコアリングにおける行動の可視化もCookieを活用した機能です。
Cookieを活用して個人ごとの閲覧ページを記録することで、「料金ページを見たら5点」「資料請求したら10点」といったスコアリングが可能になります。
数千件のリードリストの中から、直近でスコアが高い「ホットリード」だけを抽出してインサイドセールスが架電するなど、架電の優先度づけに活用できます。
関連記事:スコアリングとは|仕組み・設計・効果測定まで徹底解説
興味関心に基づいたメールの自動配信ができる
MAツールでは、ステップメールやシナリオ配信などの機能で、Web上の行動履歴をもとに、その人の興味関心に合わせたメールを自動で送り分けることができます。 例えば、「SEOの基礎知識」という記事を読んだユーザーに対して、翌日に「SEO成功事例集」のダウンロードを促すメールを送る、といった設計です。
一斉配信のメルマガよりも開封率やクリック率が高くなりやすく、顧客体験を損なわずにナーチャリングを進めることができます。
関連記事:ステップメールとは?BtoBのシナリオ例とツールの選び方を解説
関連記事:MAシナリオとは?その設計、本当に必要?失敗しないための判断基準
【実践編】Cookieと個人情報の紐付け数(実名化率)を最大化する方法

個人個人に合った、情報を届けてアプローチしていくには、Cookieと個人情報の紐付け(実名化)が必要になってきます。
ここでは、実名化率を意図的に高めるための実践的な手法を3つ紹介します。
- 入力フォームの最適化(EFO)で、登録のハードルを下げる
- ホワイトペーパーやウェビナー等の「マイクロコンバージョン」を活用する
- オフライン経由のリードへ再アプローチしてサイトへ誘導する
入力フォームの最適化(EFO)で、登録のハードルを下げる
オンラインからのリード獲得の窓口である「フォーム」の通過率を高めることが最優先です。
BtoBでは、架電時のトークに向けて詳細な情報を取得したいという思いから、「会社名、氏名、役職、業種、職種、メールアドレス、電話番号、課題感…」と入力項目を増やしてしまうことがあります。しかし、項目数が多いほど、ユーザーは入力を諦めて離脱してしまうのです。
実名化を目的とするなら、初回接点のハードルは極力下げることをおすすめします。
これはリード獲得数の増加にもつながる取り組みです。
例えば、必須項目は「氏名」「会社名」「メールアドレス」の3点のみに絞り、役職などは任意項目とする工夫が有効です。
また、MAツールの機能を使って、2回目以降の入力時には前回入力した内容を自動表示させることで、ユーザーの手間を大幅に減らすこともできます。
ホワイトペーパーやウェビナー等の「マイクロコンバージョン」を活用する
「お問い合わせ」や「見積もり依頼」は、購買意欲が非常に高いユーザーしか行いません。これだけを待っていては、紐付け数はなかなか増えません。
そこで、検討段階が浅いユーザーでも反応しやすい「マイクロコンバージョン」を用意します。
- 業界のトレンドをまとめたホワイトペーパー
- 現場でそのまま使えるワークシートやテンプレート
- ノウハウを解説したウェビナー
これらの有益なコンテンツを提供する代わりにフォーム入力をお願いすることで、自然な形でリード獲得とCookie紐付けを実現できます。
一度紐付けが完了すれば、その後ユーザーが本格的な検討フェーズに入ったタイミングで、行動検知機能を使って適切にアプローチできるようになります。
関連記事:【BtoB向け】カスタマージャーニーマップの作り方:複数関係者×長期検討を可視化するテンプレート
関連記事:ホワイトペーパーとは? BtoBのリード獲得・育成のための作り方と活用法
オフライン経由のリードへ再アプローチしてサイトへ誘導する
Webサイトからの流入だけでなく、展示会での名刺交換や過去に営業が交換した名刺情報も活用しましょう。これらのオフライン情報は、MAツールにインポートしただけでは、Web上の行動履歴と紐付いていない状態です。
そこで活用したいのが、お礼メールやメルマガの配信です。そのメール内のURLをクリックしていただくことで、初めて「名刺でお会いした鈴木さん」と「Web上のブラウザID」が結合されます。
特に展示会直後のお礼メールは開封率が高く、訪問者の関心も高まっています。 このタイミングで自社のWebサイトへ誘導するURLを必ず含め、クリックを促すことが大切です。地道な取り組みではありますが、実名化率を着実に高めるための確実な方法となります。
知っておくべきCookie規制と法対応
Cookieを活用したマーケティングを行う上で、避けて通れないのが「技術的な規制」と「法律による規制」への対応です。
MAツールを安全に運用するために、マーケターが最低限理解しておくべきCookie規制と法対応について解説します。
サードパーティCookieの規制について
AppleのSafariの「ITP機能」やGoogle Chromeの「Privacy Sandbox」など、主要ブラウザにおいてサードパーティCookieを廃止・制限する動きが完了しつつあります。これにより、Webサイトを横断してユーザーを追跡するリターゲティング広告などは大きな影響を受けています。
一方、多くのMAツールは、自社ドメインから発行される「ファーストパーティCookie」を主に使用してトラッキングを行います。そのため、広告配信ツールに比べると規制の直接的な影響は受けにくく、自社サイト内の行動分析は今後も継続可能です。
ただし、ブラウザの仕様変更によりCookieの保存期間(有効期限)が短縮される傾向にあるため、長期間の追跡が以前より難しくなっている点は認識しておく必要があります。
改正個人情報保護法への対応
2022年4月に施行された改正個人情報保護法では、Cookie情報の取り扱いが厳格化されました。特に重要なのが「個人関連情報」という概念です。
生存する個人に関する情報であって、個人情報、仮名加工情報及び匿名加工情報のいずれにも該当しないもの(個人情報保護法第2条第7項)
引用:https://www.ppc.go.jp/all_faq_index/faq2-q2-8/
Cookie自体は特定の個人を識別できないため「個人関連情報」として扱われますが、これをMAツール等に取り込み、自社が保有する個人情報(氏名やメールアドレス)と紐付けて利用する場合は、法的な配慮が必要です。
具体的には、プライバシーポリシーにおいて「Cookie等の個人関連情報を個人データとして取得・利用する」旨を明記し、利用目的(マーケティング分析、広告配信など)を本人に通知・公表する必要があります。また、データを第三者に提供して紐付ける場合には、あらかじめ本人の同意を得ることが義務付けられています。
電気通信事業法への対応
2023年6月に施行された改正電気通信事業法では、「外部送信規律」への対応が求められます。
これは、Webサイト閲覧者の情報を、閲覧先のサーバー以外(MAツールのベンダー、Google、広告事業者など)に送信する場合、以下の事項をユーザーに通知または公表(Webサイト上の分かりやすい場所への掲載)することを義務付けるものです。
- 送信される情報の項目(閲覧ページ、IPアドレス、識別IDなど)
- 送信先の名称(MAツールの提供会社名など)
- 利用目的(マーケティング分析のため、など)
MAツールを導入している企業の多くはこの対象となります。 「外部送信ポリシー」や「クッキーポリシー」「プライバシーポリシーに明記し、使用しているツール名やデータの送信先一覧を公開するなどの対応が必要です。
まとめ
MAツールは「マーケティングオートメーション」という名称から、導入すれば自動的に顧客を識別し、施策が勝手に動き出す万能ツールだと期待されることがあります。
しかし実際には、人の手による丁寧な設定と、活用方法が必要になります。
この度解説したように、MAツールが個人を特定するために「Cookieを活用している」など裏側で動く仕組みをきちんと理解し、一つひとつの施策を丁寧に積み重ねていってください。
MAツールを導入したものの、「機能が複雑で使いこなせていない」「コストが見合わない」といったお悩みはありませんか?
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